偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 ──……ええぇぇぇっ!?

 嘘でしょ。なんでここに逢坂社長がいるわけ? これは何かの陰謀? 新手のドッキリ?

 愛子さんを窺い見るが、逢坂社長の隣りに座っている女性と何やら話をしている。仲が良さそうに話すその様子から見て、ドッキリではなさそうだ。

 じゃあ私と逢坂社長が向かい合っている、この状況は何なの?

 体は小刻みに震えだし、この場所からすぐにでも立ち去りたい衝動に駆られる。

 でも如何せん、全身に力が入らない。しかも目の前に座っている逢坂社長がニヤリと片方の口角を上げるほくそ笑むから、蛇に睨まれた蛙のように怯えた体は立つことさえできないでいた。

「朱里ちゃん、どうかしたの?」

 私の異変に気づいた愛子さんが、顔を覗き込む。

「う、ううん。なんでもないです。ちょっと帯が苦しくて、すみません」

 自虐的に笑ってそう言うと、少しだけその場が和んだ。

 なんでこんな事になったのか──。



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