偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 もう逢坂社長のことはスッパリキッパリサッパリ諦めて、今後のことだけを考えて生きるのよ朱里!

 心の中に住まう、もうひとりの自分が釘を刺す。

 仕方ない。人を欺くとか気持ちとしてはまだかなり戸惑いがあるものの、しばらくは逢坂社長との偽装恋愛でごまかすしかなさそうだ。

「うまくいきますかね?」

「俺を誰だと思ってる? お前は何も心配しないで、ただ俺に身を委ねておけばいい。これからよろしくな、朱里」

 逢坂社長は私の前髪をかき分け、おでこにチュッとリップ音を立てて口づけた。

 その行為があまりにも自然で、間近にある逢坂社長の顔をボーッと見つめる。チュッって……チュッ!? ええぇぇぇぇっ!!

 おでことはいえ初めてのキスに驚き、これでもかというくらい大きく目を見開く。

 なんで私、逢坂社長にキスされてるの? しかも朱里って名前で呼ぶなんて、偽りの恋人なのにそんなことする必要ある?

 慌てておでこを左手で隠し、右手で逢坂社長を押しのけた。


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