偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「キ、キスも呼び捨ても、必要ありませんから!」

 顔は耳まで熱く、真っ赤になっているだろう顔を見られないように俯いて顔を隠す。

「俺たちの間では偽りでも、他人から見たら本当の恋人のように振る舞わないといけない。付け焼き刃ではごまかせないだろう。それとも何か、朱里は恋愛経験豊富で大丈夫だとでも言うのか?」

 逢坂社長がニヤッと笑う。

「そ、それは……」

 恋愛経験豊富どころか、その“恋愛”すらしたことがない。おでこのキスで動揺丸出しなんだから、きっともう逢坂社長にはバレてるんだろうけれど。だからこうやって遊ばれてしまうんだ。

「……イジワル、ですね」

 三十二にもなる大人がすることじゃないと上目遣いで睨みつけ、唇を尖らせ拗ねてみせる。

「そう怒るな。大丈夫だ、俺がゆっくり恋愛指南してやる」

「社長が、ですか?」

「そうだ。まずは手始めに、真史と呼んでもらおうか」

「真史!? それって社長の名前じゃないですか!」

 冗談じゃない。そんなの無理に決まってる。



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