偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
だってあなたは、私が勤める会社の社長。年齢だって六歳も違うし、そもそも立場が違う。そんな人を名前で呼ぶなんて、ハードルが高すぎるでしょ。
わなわなと震える体で、首を大きく横に振った。
でもそんなこと、逢坂社長が許してくれるはずもなくて。私の顎に長く繊細な指を添えると、クイッと顔を持ち上げる。
「朱里。俺の名前を呼ばなきゃ、唇にキスするけどいいのか?」
「はあ!? 何言ってるんですかぁ?」
驚きの連続で、声が裏返ってしまう。
そんなこと、いいわけない! そんなこともわからないなんて、もしかして逢坂社長って究極のサディスト?
会社にいるときの態度から多少その気があるとは思っていたけれど、まさかここまでだったなんて。百年の恋も一気に冷めるとじゃない。
でもなぜだか、顎だけじゃなく腰までグッと引き寄せられていて、逢坂社長から逃げることができない。しかも向かい合っている顔の距離が近い。漆黒の目が、悪戯に私の瞳を捉えて離さない。