偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「真史……さん」
相手は我が社の社長だ。ダメだと言われても、呼び捨てにはできない。上目遣いに社長の顔を見れば、仕方ないなとでも言いたげに含み笑いしている。
「まあ最初は、それで良しとするか」
文句のひとつでも言われるかと思ったけれど、よかったみたい。
ホッと一息つく。
でも逢坂社長は私の顎を支えていた指をスルリと頬に移動させると、グッと顔を近づけた。え?っと思う間もなく、柔らかいものが唇に重なる。熱を帯びたそれが、逢坂社長の唇だと気づくのに数秒かかってしまった。
え、何? どうして私、社長にキスされてるの? ちゃんと名前を呼んだのに、これじゃあ約束と違うじゃない!
慌てて逢坂社長の胸に両手を当て、グッと体を引き離す。