偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
二十分ほどで、会社の最寄り駅に到着。足早に会社に向かうと、予定通り普段より三十分以上早く出社することができた。メニュー開発部に急ぎ自分のデスクにバッグをしまう。出社早々一息つく間もなく、隣のキッチンへと向かった。
エプロンに三角巾。調理ができる準備を整えて、丁寧に手を洗う。
「よし。いっちょはじめますか!」
くるくると腕まくりをしながら、大きな業務用の冷蔵庫へと向かう。中から取り出すのは、もちろん“伊勢どり”。今日のために、いつもより多く取り寄せた。
「やっぱり美味しそう」
天ぷら用の胸肉はピンク色が綺麗で、そのツヤとハリのある身に喉が鳴る。
食材を目の前にしただけなのに、食いしん坊か!
そうツッコミを入れてひとり笑っていると、お腹までギュルギュルと騒ぎ出す。
あ、そうか。朝ごはん食べてなかったっけ。どうりで、あちこち鳴るわけだ。