偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

『ちょっと、何するんですかっ?』

 唇をギュッと抓まれていて何も発することができない私は、体と目でそう訴える。でも私のそんな主張も見事にスルー。この人相手に何をしても無駄だと気づき、肩を落とした。

「呆けた顔もなかなか可愛いな」

 言っている意味がわかりません。

「これからの日々が楽しくなりそうだ」

 私は先が思いやられるよ……。

 でもただひとつ。

 逢坂社長の笑顔は──悪くない。

 『逢坂社長の笑顔を見ることができたら、その人は幸せになれる』

 ふと、脳裏に浮かんだ言葉に想いを馳せる。

 この言葉にどれだけの信憑性があるのかわからないけれど、もしかしたらそのチャンスが巡ってきたのかもしれない。

 困った時の神頼みじゃないけれど、少しでも私の想いが届くよう──神様に願うのも悪くないかもしれない。





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