偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
逢坂社長とお見合いをしてから四日。事あるごとに彼の顔を思い出しては、自分が自分じゃなくなる日々を送っている。こんなんじゃ身がもたないとお見合いや彼のことを考えないよう仕事に没頭しているというのに、時々名前を口にしては墓穴を掘る始末。
「大丈夫ですか? 熱、あるんじゃないですか?」
洗面所の入り口にちょこんと顔を出す市ノ瀬くんの表情は、眉が下がって心配していますと言わんばかり。
本当に熱でもあればよかったんだけど……って、ううん、それそれでよくないんだけれど。これで本当に熱があるんだとすれば、これは“知恵熱”的なもので、心配するようなものではない。
ああ、ほんと情けない。
そんなことで市ノ瀬くんに気を使わせてしまい、ホント申し訳なくて顔を上げられないでいると、右の肩に手が乗せられた。
「高坂さん。僕は年下ですが、何か悩みがあったらなんでも相談してくださいね。僕、結構聞き上手なんですよ」
「市ノ瀬くん……」