偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
後輩の市ノ瀬くんがそんな事を言うなんて思っていなかった私は、驚きながらもゆっくり顔を上げた。
恥ずかしいやらありがたいやらで、きっと今の私はなんともいえない微妙な顔をしているだろう。でもその顔を見た市ノ瀬くんにプッと笑われてしまい、頬を膨らませた。
「子供みたいに、そんな膨れないで。さあ、早く試作品作っちゃいましょう。ゴールデンウィーク明けには最後の試食会が待ってますよ」
市ノ瀬くんは爽やかな笑顔を向けてそう言うと、キッチンに戻っていった。
私と市ノ瀬くんって、ホント二歳しか違わない? 最近なんだか、彼のほうが年上に見えてきた。ここのところの彼の成長ぶりは凄まじいし、私も頑張らないと……。
今は余計なことは考えない。今度こそ逢坂社長に一発オッケーをもらえるよう、気を引き締めていこう。
ひとり鏡の前で気合を入れると、ガッツポーズを決めた。