偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「あの笑顔が私だけのものだったらなぁ……」
お見合いの日から四日。連絡先を交換したというのに、逢坂社長からはメールひとつこない。姿は社内で数回見かけたことはあるのもの、気づいてすらもらえなかった。
「電話くらい掛けてきてくれたっていいのに」
一体、偽りの恋人ってなんなの? 勝手にキスだけしといて、あとは知らんぷり?
逢坂社長の気迫に押されて納得したように、彼の提案にオッケーを出してしまったけれど、今更ながらに後悔。こんな複雑な思いをするなら、あの場でちゃんと断ればよかった……。
はあ~と大きなため息をひとつ。と同時に、枕元に置いてあったスマホがブーブーと震えだす。
「誰よ、こんな時間に」
部屋の掛け時計は、夜中の十一時を指している。
明日からの三連休。遊ぶ相手のいない友人からの誘いかと、誰かも確認しないで電話に出て、思わぬ人の声に飛び起きる。