偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
天気は晴れ。朝の眩しい光と爽やかな風が、新緑の木々を照らし揺らしている。
腕時計の針は、七時十分前を指していた。
流石の真史さんでもまだ到着していないだろうと、小さくステップを踏みながら玄関のポーチを抜ける。道路に出ようと一度足を止めると、塀の向こう側にスタイリッシュな黒いスポーツワゴンが停まっているのが目に入った。
まさかね──。
そう思いながら足を一歩踏み出したその時、スポーツワゴンの運転手側のドアが開く音が聞こえた。え?っと思いながら視線を動かすと、中から出てきたのは……。
「おはよう、朱里」
「……社長?」
「おい、また社長になってるぞ。今ここでキスしても……」
「お、おはようございます、まま、真史さん! ちょっとした間違えじゃないですか! さあ、は、早く行きましょう!!」
慌ててそう言うと、急いで車の助手席に飛び乗る。一瞬自分から勝手に乗り込むのはどうかと思ったけれど、今はそんなこと構っていられない。