偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
今ここでキスなんて、冗談じゃない。近所の目も気になるし、何より父と母がどこから見ているかわからない。そんなところでキスなんてしようものなら、帰ってきたとき質問攻めに合うのは目に見えている。
「そんなに俺とのデートを楽しみにしていたとは驚きだ」
運転席に乗り込んだ真史さんは、余裕綽々の顔をして私を見ていた。
「真史さん。冗談でも、家の前でキスとか言わないでください」
「名前で呼ばなかったらキスするって約束なんだから、冗談なんかじゃないぞ」
「はいはい、わかりました」
ダメだ。真史さんには、何を言っても勝てる気がしない。あれが冗談じゃないと言うなら、余計に厄介だ。
私は真史さんのことが好き。だからキスしたくないわけじゃない。でももし真史さんとキスをしても、それは愛情のないキス。そんなキスを何回もするなんて、こっちこそ冗談じゃない。
「昨日の夜と今ので、キス二回だな」
「私と真史さんは偽りの恋人なんですよね? なんでそんなにキスにこだわるんですか?」