偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 今ここでキスなんて、冗談じゃない。近所の目も気になるし、何より父と母がどこから見ているかわからない。そんなところでキスなんてしようものなら、帰ってきたとき質問攻めに合うのは目に見えている。

「そんなに俺とのデートを楽しみにしていたとは驚きだ」

 運転席に乗り込んだ真史さんは、余裕綽々の顔をして私を見ていた。

「真史さん。冗談でも、家の前でキスとか言わないでください」

「名前で呼ばなかったらキスするって約束なんだから、冗談なんかじゃないぞ」

「はいはい、わかりました」

 ダメだ。真史さんには、何を言っても勝てる気がしない。あれが冗談じゃないと言うなら、余計に厄介だ。

 私は真史さんのことが好き。だからキスしたくないわけじゃない。でももし真史さんとキスをしても、それは愛情のないキス。そんなキスを何回もするなんて、こっちこそ冗談じゃない。

「昨日の夜と今ので、キス二回だな」

「私と真史さんは偽りの恋人なんですよね? なんでそんなにキスにこだわるんですか?」


< 87 / 195 >

この作品をシェア

pagetop