偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「あ、悪い!……って、なんだ高坂か。どうした、こんなに早く出勤して」
体をかがませしゃがみ込む私を覗き込み、一瞬心配そうな素振りを見せた声の主だったけれど。私だとわかるとすっくと立ち上がり、自分には関係ないと言うようにキッチンへと入っていく。
「なんだ高坂かっ……て、なんですか社長! 私ならドアに当たってもいいって聞こえましたけど?」
「当たってもいいとは言ってない。そこに突っ立っていた高坂が悪いと思ったまでだ」
なんだ、その屁理屈。ちょっと、いや、かなりムカつくんですけど。
頭を擦りながら立ち上がり、社長をキッと睨みつける。
そう。今私の目の前に飄々とした顔で立っているのが、今日の戦いの相手──いや、もとい。我が社の社長、逢坂真史その張本人。