偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「そうだったんですね。ありがとうございます」
「デートだからな。朱里が喜ぶところへ行きたいと思っていた」
「え……」
それって、私のことを一番に考えてくれてるってこと?
なんか、すごく嬉しい。
真史さんの気遣いと優しい気持ちに、頬が熱くなってくる。
デートなんてしたことがないから、正直どんなものだと思っていたけれど……。
「真史さん。実は私、デートってしたことがなくて」
「ああ」
「だから、上手く偽りの恋人を演じられるかわからないですけど」
緊張して体が震える。でもどうしても、今の自分の気持ちを真史さんに伝えたい。
手にギュッと拳を握り、大きく深呼吸をする。ゆっくり運転席の方に顔を向けると、まっすぐ前を見て運転する真澄さんの横顔に惹きつけられてしまう。
「今日は真史さんとの一日を、目一杯楽しみたいと思います」
本当の恋人ではないけれど、真史さんは私の想い人。お見合いがなければ、きっとこんな時間を迎えることはなかっただろう。