偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
これ以上、真史さんを困らせるわけにはいかない。そう思って笑ってみたけれど、どうも上手くいかなかったみたいで。真史さんはやれやれと言わんばかりに、力なく笑ってみせた。
「今さら偽りのことは気にするなと言っても朱里には難しいかもしれないが、あまり深く考えるな」
「……はい」
それができれば、こんなに落ち込まないんだけど。子供っぽ過ぎて、情けなくなってしまう。
信号が青に変わり、真史さんは前を向いてしまう。六つも歳が違うからか、それとも経験の差か、やっぱり真史さんは私よりもずいぶん大人で。横顔までもが凛々しくて素敵だ。
「兎にも角にもだ」
「はい?」
ハンドルを軽く握りまっすぐ前を向いたままの真史さんが、優しい声色で言葉を紡ぐ。
「今の俺は、朱里の彼氏だから」
「か、彼氏……ですか?」
「朱里が俺の彼女なら、俺はお前の彼氏だろ?」