偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
私が、真史さんの彼女……。
生まれて初めての“彼女”という甘美な響きにうっとりしてしまう。涙は止まり、さっきまでの暗く沈んだ気持ちが一瞬で吹っ飛んだ。現金なものだ。
「手、貸して」
「手、ですか?」
運転中になんで手?と思いながらも、真史さんの方へと右手を差し出す。まさか車の中で手相占い?とか、バカげた妄想をしてみたりして。
「朱里の手、結構小さいんだな」
そういった真史さんは次の瞬間、なんの前触れもなく私の手をキュッと握りしめた。いわゆる“恋人つなぎ”というやつだ。
女性誌の特集ページ『私と彼の初デート』で見たのと同じシチュエーションに、繋がれているふたりの手に目が釘付け。心臓はバクバク激しく音を立てるし、繋がれた手から真史さんの熱を感じてどうにもこうにも落ち着かない。