偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 何気に目線を上げれば、真史さんは涼しげな顔をしていて。片手で器用に運転しているから、手を離してとも言いにくいし。

「あ、あの……なんで手……」

 そう窺うだけで精一杯。

「なんでって、彼女と手を繋ぐのに理由なんているのか? でもまあ強いて言うなら、どんなときでも朱里を感じていたいから。それに今日はデートなんだ、つべこべ言ってないで思う存分楽しめ」

「はぁ……」

 そうなんだ。ドライブデートっていうのは、ふたり仲良く手を繋ぐものなのね。

 しかし『どんなときでも朱里を感じていたいから』なんて、言われたこっちが目を覆いたくなるような恥ずかしいことを、よくもサラッと言えるものだ。

 でも手を繋ぐって……照れくさいけれど、大切にされてるようで嬉しい。

 でもこれは偽装恋愛。浮かれてはいけないと弾みそうになる心を必死に抑えつつも、ついニヤニヤしてしまう顔はやめられそうになかった。





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