偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 都心から自動車専用道路を走り一時間半。到着したのは、まだ人が少ない海辺。近くには恋人たちの聖地と言われている、白亜の灯台が見える。

 真史さんは繋いでいた手を離し運転席から下りると、助手席側へとまわりドアを明けた。「ほら」と差し出された手に、躊躇しながらも自分の手を重ねる。

「ちょっと早く着きすぎたな」

 夏には多くの海水浴客で賑わうこの海辺も、朝の九時前では人影はまばら。ゴールデンウィーク中はイベントも開催されているみたいだけれど、まだ準備中のようだ。

「海の近くまで行くか?」

「はい」

 真史さんに手を引かれ、浜辺をゆっくり進む。ドライブデートだからとヒールのないフラットなパンプスを履いてきたけれど、サラサラの砂の上ではそれでも歩きにくい。砂に足を取られフラフラしながら歩いていたら、隣で歩く真史さんの足が止まった。

「靴、脱げば」

「え? 靴ですか?」

「歩きにくいんだろ?」


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