あの歌が聞こえてくる
バリバリの芋ケンピ
七月の半ば、夏の独特の香りと、蝉が八年振りに地上に出てきて、タッチの再放送が始まるころ、小さなアパートに俺は住んでいた。こんなありきたりの始まり方しか出来ないくらい冴えない俺、名は森田五郎丸(マル)。歳は18。道をそれる事無く今までやってきた。それでも、俺は「周りの輩とは違う!俺は歴史に名を残す人間だ!」と頑なに信じて生きていた。まぁ言わばどこにでもいる三流高校の三年生だ。何か一つの事を続けていれば話は別だが、何かを続けたことがない。しかも今年は大学進学か就職活動というめんどくさいが避けては通れない、言わば“人生の選択”をしなくてはならない時だった。やりたいことが特にない俺は本当に辛い。ましてや頭の良い方ではないだけ、とりあえず大学という選択も難しかった。そして、やりたいこと、から、やれること、をと、次第に現実を見なくてはならない。