あの歌が聞こえてくる
案の序『磯』は大盛り上がりだった。ママさんが出てきた。「あら!マルちゃんいらしゃい!チョットよっていきなさいよ!」「あ・どうもこんばんは!いや・・・いいですよ。とうちゃんは?」「飲んでるわよー!もーあんたに会いたがってる人いるから!早くーはいんな!」「え?じゃあ、おじゃまします。」久し振りに中に入った。昔はよく父ちゃんの後をくっついてジュースを飲ましてもらっていた。ここでしか許されないジョッキで飲むジュースが大人になった気分で大好きだった。「懐かしいな~!この臭い」「おーマル!よく来た!ママーちょっとこいつにもグラスだしてやって!お前焼酎飲めんだろ?お・そうそう!覚えてるか?とおる君だぞ!」「うん・・・あ・こんばんは!お久しぶりです。」ママさんは相変わらず化粧が濃く、顔が真っ白だ。「はい!どーぞ!グラス!マルちゃん久しぶりに店の中入ったんじゃないの?昔はよくここで寝てたんだよ!しかし焼けてるねー!何サーフィン?とおるちゃんついであげて!待ってたのよね!」「まぁ・・はい」すると、割って入ってきたオカマのとおるさん、胸にはシリコンまで入って、又一段と女に近ずいていた。「ちょーっと良夫チャン、マルちゃんいい男になったわねー!!覚えてる?お姉ちゃんの事?でもおもしろいわよねー、赤ン坊だったマルちゃんとこうしてお酒を飲むなんって!んで幾つになったわけ?」グングン焼酎をついでくる。とおるちゃん顔が近いよ!そして髭が痛いよ!酒臭いよ!そしてもう酒はいいよ!「あ・すみません!あ・こぼれる・・。えー18歳になりました。とおるさん・・ちょっと顔が近すぎで・・・いや・ごめんなさい・・・」「何がとおるさんよ!とおる姉ちゃんって呼んでくれてたくせに!あんたのおしめ誰が換えたと思ってんのよ!ズボン脱がせるわよ!早く飲みなさいよ!もう夏休みでしょ?今日は朝まで行くよー!ちょっとー気分良くなってきちゃった!歌っちゃおうかな!ママァ~歌本取って!」怖ええよ・・・マジで。しかしとおる姉は歌がチョー上手いのだった。昔バンドを組んでいて、暴走族にも入っていて、その道ではかなり有名で、デビューも決まっていたらしい。それなのに、今じゃこの汚いスナック磯でオカマとして近所のオヤジさん達と一緒にいるとおる姉さん。人生何が起こるか分かんないものだ。何があったんだい?ねえさん・・・
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