あの歌が聞こえてくる
42.195キロ
なんて謝ろう?なんて切り出そう?素直に謝って、ミドリちゃんの相談をしよう。そんな事を考えていたらもうてつぼうの家の前に着いていた。インターホンを押すのが憂鬱だ。小学校の時てつぼうと近所の家に石を投げてガラスを割って謝りに行った時を思い出した。「はぁ~・・・よーし!!」<ピンポーン~>なんだかやたらインターホンが響いた気がした。「はーい!」おばちゃんの声が聞こえ、扉が開いた。
 「はーい?あらマルちゃんこんにちは!あれ?うちの子と一緒じゃなかったの?なんだかサーフィン始めるんだって!ってサーフショップいったけど・・・もうすぐ帰ってくると思うけど・・・。」体に衝撃が走った。なんだか裏切られた気持ちがした。俺は物心ついた時からてつぼうと一緒にいた。てつぼうというあだ名も俺がつけた。てつぼうは俺より背が大きいけど、シャイで遠慮しがちなやつで俺はどこかで見下していたのかもしれない。いや、俺は世の中の奴らを見下しているのかもしれない。てつぼうは自分から進んで何かをやろうとするタイプではないだけ、自分からサーフィンをやろうとしているてつぼうが怖かった。「あ・そうですか。わかりま・・・。」後ろから車の止まる音が聞こえ、「ありがとね!付き合ってもらちゃって!明日じゃあ朝海で!」てつぼうがトシの車から降りてきた。「ただい・マル?」「あらちょうどよかった!マルちゃん来てくれてるわよ・・マルちゃん~?へんな子ね?なんかあったの?」とにかく走った。逃げた。今俺どんな顔で走ってるんだろう?想像もつかない。なんだかドラマとかで見たことがあったが、今こうして俺は走っている。とにかく見えなくなるまで走ってやる。これじゃあ女の喧嘩とかわんねーじゃん。ムカついたら殴るで仲直りするんじゃなかったのかよ。しかも心のどっかで追いかけてくるてつぼうの姿を想像している。どれくらい走っただろう。俺このままじゃ本当に駄目になる。
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