あの歌が聞こえてくる
海はチャリンコで、駅前の商店街を避けて、森林に囲まれた静かな住宅街を抜けると、俺の通っていた小学校が見えてくる。昔はあんなに大きかった校庭も今では何だかとても小さく見える。校庭の隅にあるニワトリ小屋を横目にわき道を入り、昔よく来た、寝ながら店番をしている駄菓子屋のばーちゃんが、死んでいるのではなく、寝ているのを確認しながら、海へまっすぐに伸びる大通りにでる。そして途中でローカルしか使わない海岸への抜け道にはいるが、久しぶりに来たせいか、何か変わったなと走らせていたら、軽く迷ったが無事海が見えてきた。ここまで1時間かかった。海は去年トシと来て以来ぶりで、なんだか部屋にあるサーフ用品達に申し訳ないような、ムカツクような複雑な気持ちになった。サーファーや海水浴客は、嬉しそうにやっときた夏を楽しんでいる。「おおー!まる!?まるー!!」覚悟はしていたがやっぱ会ってしまった。トシだ。トシは黒人より黒人ってぐらい焼けていた。髪もいい感じに潮焼けしていて、まさに“サーファー”だった。「マル、ちょー久しぶりじゃねーかよ!生きてたんかよ!波に流されちゃたんかと思ったよ!(大笑)」「お、おお。トシ!焼けてるなー!今日波いーの?」「えー(笑)?今日はいいんじゃねぇーか!!セット頭だな!綺麗に割れてたよ!!なに波乗り・・・じゃねーのかよ!釣りかよ!!釣りも良いけど、せっかく良い板買ったんだからたまには波乗りしようぜー!!板がグレちゃうよー!まぁ連絡入れるよ!」「あ・ああ!近いうち行こうな。じゃあ!」んー正直悔しいけどマジでかっこよかった。しかも、車はランクルに乗っていて、隣には可愛い女の子も乗っていた。「マル、握手うまくできてたね!俺と練習したかいあったね!いゃーやっぱトシ君ってかっくいーね!!彼女可愛かったし!」「そ、そうかー!女、可愛かったか?よく見えなかった。」マルちゃん、ダセエよ・・・。