夜をこえて朝を想う
「その前に、俺の話聞いて?」
「何よ。」
「ウサギ触りに行っていい?」
小動物ふれあいコーナーを指差して言った。
「あ、うさぎ。うん、行こう。」
ふわふわしながら、話されると、怒りも収まるってもんだ。
「かぁわいー。ねぇ、ほら。この目。」
「ふわふわだなー。」
軽くてふわふわで暖かい。
膝に乗せたまま、癒されていた。
また写真を撮る二宮くんを睨む。
「付き合ってくれません?」
「だからー、何で?」
「好きだからって、ずっと言ってる。」
「初めて聞いたけど?」
「はぁ!?ずっと言ってただろ!?一体何……あれ?言ってなかった?」
「…たぶん、聞いてない。」
「…たぶんて、何だよ。あー、でもたぶん、言ってない。」
「…たぶんて、何だよ。」
二宮くんが吹き出した。
「好きだ。えーっと、結構前から。」
「何で?」
「理屈じゃないだろ?まあ、強いて言うと、その顔にその身体に…その…乳。」
あやうく、うさぎを握りそうになった。
「頭の悪そうな返答。」
「まあ、全部だ。」
「まとめて、きた。」
「それから、押しに弱いとこ。お願いすると、嫌って言えないだろ?だから、つけこまれる。」
「君みたいなのに…?」
「僕、優良物件。」
「ショールームでしょ。」
軽くこちらを睨んで続けた。
「だから、押したらいけるかなって。…思ったんだけどな…。」
「うん、でも…無理。」
「ちぇ。
じゃあ、ちゃんと昇華したら?でないと、またストーカーされるよ。」
「彼は、しないよ。」
「“彼に”とは言ってないけど。」
「…あ…」
「待ってる。」
「二宮くん。」
「待つなって言われても待っちゃうんだから、仕方ないよね。」
「……ごめん。」
「ストーカーになろうかな。」
「目立つよ。その映え。」
「よし、付き合おう。決めた。」
「ちょ、血迷って…」
「別れて欲しかったら、ケリつけてきて?どっちみち、前向かなきゃだろ?今月中。それが無理なら…このまま別れない。」
ケリ=清水部長とのちゃんとした別れ=二宮くんとの別れ
別れてばっかだな。
って
「いや、意味分かんない。私、彼とはもう会う気ないの。」
「気持ちの、ケリ。」
混乱してきた。
「ケリつけたら、別れるって意味分かんない。結局、何も残らないというか…二宮くんに…。」
「俺も、ケリつけんの。そっから、また考える。」
「また?」
「さ、行こうかな。じゃあね、うさちゃん。」
外で手を洗うと歩き出した。
意味分からない。
「あと、何回か来るんだっけ?会社。」
「ひとまず明日。携帯返す。」
「今月いっぱいは、俺の彼女ね。」
「いや、だから…」
「何もしない。」
「いや、した!もう、したから!」
「あんな、ちゅー?うさぎにすんのとかわらねぇ。」
…そうか…
っていやいや。
「メッセでいいから。結果。31日に。」
そう言って、私の手を取った。
指を、絡ませる。
カシャッ
写真を撮ってすぐに離す。
「んー、映えるねー。匂うねー。」
「いや、それ、匂わせ越えてる。」
「実際は、もっと…何もない。そんなもんだよ。SNSなんて。」
「ありがとうね、慰めてくれて。」
彼の名目は、分かってる。
やり方は…何て言うか…だけど。
「いーえ、ありがとうね、思い出くれて。」
背中を向けたまま、そう言った。
少し照れた、その背中が夕日に染まって…
綺麗だった。
「何よ。」
「ウサギ触りに行っていい?」
小動物ふれあいコーナーを指差して言った。
「あ、うさぎ。うん、行こう。」
ふわふわしながら、話されると、怒りも収まるってもんだ。
「かぁわいー。ねぇ、ほら。この目。」
「ふわふわだなー。」
軽くてふわふわで暖かい。
膝に乗せたまま、癒されていた。
また写真を撮る二宮くんを睨む。
「付き合ってくれません?」
「だからー、何で?」
「好きだからって、ずっと言ってる。」
「初めて聞いたけど?」
「はぁ!?ずっと言ってただろ!?一体何……あれ?言ってなかった?」
「…たぶん、聞いてない。」
「…たぶんて、何だよ。あー、でもたぶん、言ってない。」
「…たぶんて、何だよ。」
二宮くんが吹き出した。
「好きだ。えーっと、結構前から。」
「何で?」
「理屈じゃないだろ?まあ、強いて言うと、その顔にその身体に…その…乳。」
あやうく、うさぎを握りそうになった。
「頭の悪そうな返答。」
「まあ、全部だ。」
「まとめて、きた。」
「それから、押しに弱いとこ。お願いすると、嫌って言えないだろ?だから、つけこまれる。」
「君みたいなのに…?」
「僕、優良物件。」
「ショールームでしょ。」
軽くこちらを睨んで続けた。
「だから、押したらいけるかなって。…思ったんだけどな…。」
「うん、でも…無理。」
「ちぇ。
じゃあ、ちゃんと昇華したら?でないと、またストーカーされるよ。」
「彼は、しないよ。」
「“彼に”とは言ってないけど。」
「…あ…」
「待ってる。」
「二宮くん。」
「待つなって言われても待っちゃうんだから、仕方ないよね。」
「……ごめん。」
「ストーカーになろうかな。」
「目立つよ。その映え。」
「よし、付き合おう。決めた。」
「ちょ、血迷って…」
「別れて欲しかったら、ケリつけてきて?どっちみち、前向かなきゃだろ?今月中。それが無理なら…このまま別れない。」
ケリ=清水部長とのちゃんとした別れ=二宮くんとの別れ
別れてばっかだな。
って
「いや、意味分かんない。私、彼とはもう会う気ないの。」
「気持ちの、ケリ。」
混乱してきた。
「ケリつけたら、別れるって意味分かんない。結局、何も残らないというか…二宮くんに…。」
「俺も、ケリつけんの。そっから、また考える。」
「また?」
「さ、行こうかな。じゃあね、うさちゃん。」
外で手を洗うと歩き出した。
意味分からない。
「あと、何回か来るんだっけ?会社。」
「ひとまず明日。携帯返す。」
「今月いっぱいは、俺の彼女ね。」
「いや、だから…」
「何もしない。」
「いや、した!もう、したから!」
「あんな、ちゅー?うさぎにすんのとかわらねぇ。」
…そうか…
っていやいや。
「メッセでいいから。結果。31日に。」
そう言って、私の手を取った。
指を、絡ませる。
カシャッ
写真を撮ってすぐに離す。
「んー、映えるねー。匂うねー。」
「いや、それ、匂わせ越えてる。」
「実際は、もっと…何もない。そんなもんだよ。SNSなんて。」
「ありがとうね、慰めてくれて。」
彼の名目は、分かってる。
やり方は…何て言うか…だけど。
「いーえ、ありがとうね、思い出くれて。」
背中を向けたまま、そう言った。
少し照れた、その背中が夕日に染まって…
綺麗だった。