夜をこえて朝を想う
第20話

side S

それから、何度も湊の名刺を頼りに、彼女の会社へと向かった。

「あー、今日も彼女来てませんよ。」

出てきた眼鏡のイケメンがそう言った。

「…そうか、じゃあ、会社に戻るかな。」

なぜか、嘘ではないと思い、そう言った。

「効率悪いなぁ。アナログですか?」

「…いくつだと思ってんだよ。」

彼と肩を並べて歩いて、そう言った。

すっかり顔馴染みだ。

「次は、いつ来るか聞かないんですか?俺に。」

「教えてくれるんだ。」

「まさか!」

「はは!そうか。」

「その余裕が腹立ちますよね。」

「そうかなぁ。」

「いつまで続けるんですか、ストーカー。もう、一人いなくなったと思ったらまた次のストーカーだもんなぁ。」

「君が、ストーカー退治してくれるからね。」

「出来てないでしょ、退治。」

「君は?」

「何ですか。」

「ストーカーしないの?」

「会社で見れますから。」

「もう、見れなくなる。」

「いいんですよ、俺、若いから。」

「確かにね。俺が君くらいの時は…あんないい女、いなかったかな。」

「あなたの歳までには、見つけますよ。もっと…いい女。」

「あと、5-6年でか。」

「……嘘だろ!?平成生まれかよ!?」

…もう、何だ。

この既視感。

「君、フォロワー多そうだね。」

「あー、まぁ。この見た目もなんで。ていうか、そんなん知ってるんだ。」

…今時、年寄りでもしてるだろ。

「明日も、来ませんからね、彼女。」

「そうか、残念。」

「…俺は未来の…可能性にかけるんで…」

「…その、つもりだ。」

「ま、味見だけは…させてもらいましたけどね。」

「…き」

味見!?何だよ!?

何を…

「ふっ、その顔が見たかった。ああ、ムカつく。」

………。

明日も来ないのか。

なかなか会えないもんだな…。

うーん…生意気だな。

最近の若い男は。

あれだけ言えるなら…

…うちに欲しい人材だな。

で、…味見って何だよ…

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