夜をこえて朝を想う
「家、どこ?」

「あー…知りたい?」

知りたいというか…

「教えてくれないならストーカーするけど?」

「引っ越すんじゃなかったな。遠くなっちゃった。」

その言い方が、随分可愛い。

「いいよ、会いに行く。」

「土曜の夜と、日曜も?」

…ん?聞いたことあるな。どっかで。

「全部、湊のもんだ。」

「あとは…」

「次の仕事は?イタリア行くんだろ?」

「そんな事まで?」

「ああ、ストーカーだろ?」

そう言うと、また笑った。

「とりあえず、携帯。」

「知ってるんでしょ?どうせ。」

「はは!だな。入手済。」

「行くのか?イタリア。」

「うん。」

「いつ、帰ってくるんだ?」

「帰ってこない。」

「……湊」

「って言ったらどうする?」

「イタリア支店つくる。」

アジア圏にはあるんだけどな~。支店。

「怖。」

「で、いつ?」

「6月。2週目。」

「は?」

「1週間だけ。お土産買ってくるね。」

「……ああ。楽しみに待ってる。」

「そろそろ、帰るね。」

「…泊まればいいだろ。」

「何も持ってきてないもの。」

「じゃあ、朝に…」

「嫌いなのよね、それ。」

「…ああ、俺もだ。」

「用意、して?」

「…ああ。」

俺が、行けばいいのか。

そうか、初めてだな。湊の家…

「でも、何も、しないでね?」

「…好き勝手に抱かないからって言っても…駄目か?」

…好き勝手とか、言われるとこっちも…傷つくし、手は出しにくい。

「…だって…」

「嫌だった?それとも…怖かった?」

そんな、自分本意に…抱いたつもりもないんだけどな。

「あんなこと…さ、されたことなかったんだもん。」

と言って、隠れた。

……

……

ああ、なるほど。

そんなに経験は無さそうかと思っていたが…

隠れた湊を引っ張り出し

「…良く…無かったって事か?」

「し…」

「し?」

「しんじゃうかと、思った!!」

そう言ってまた隠れた。

その言い方に吹き出す。

真っ赤になる顔が可愛い。

そうか、怖くもあるんだな。変わっていくその先が。

「しなない、しなない。そっか。んー…ちょっと…あれだな。」

「何?」

「とりあえず、今…そっち行ける状態では…無くなったかな。」

「へぇ?」

「うん、はい。ほら…」

そう言って、玄関の鍵を掛けた。

そして、ワンピースの裾を持って、一気に脱がす。

「え…ちょ、ちょっと!」

「うん、力抜いて。」

「何もしないと…」

「仕方がないなぁ、湊は。

しなない、しなない、ちょっと、天国行くだけ。」

「やだ、表現がオッサンすぎる~。」

「あはは!じゃあ、湊の言葉で表現して。」

「アモーレ!」

「Ti amo」

キョトンとする彼女に

「愛してる、湊。」

そう言った。

「ピロー…」

トークじゃねぇ。

塞いだ、彼女の唇から…甘い吐息が漏れる。

「本気だ。湊が、信じない事には、始まらないだろ。」

「格好いいセリフだけど…全裸ではちょっと…」

「ん、じゃあ、帰って来てから話すとしようか。」

「どこか…ん、ちょ…ん」

「天国…」

見てみたい。

もっと、乱れる姿も。

もっともっと、変わっていくだろう…彼女の身体も。

知らない事なんてないほど、全部。

知り尽くしたい。

渇望するように、雄っぽい支配欲が押し寄せる。

それに、優しく触れたい愛護欲が混じる。

どう触れていいのか、どう触れたのか

ただ、自分の欲望だけを押し付けないように抱いた。

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