夜をこえて朝を想う
その日は、魚の美味しいお店へ連れてってくれた。

でも、その前に私の家に寄って

メイクを直しましたけれど。

「とりあえず、出世魚からやっつけよう。」

「なんだ、それ?」

「いえ、独り言です。」

「ねぇ、ぶちょー。」

私がそう呼ぶと、キョロキョロしたあとに言った。

「この店で部長は止めろ。」

「た…と…た…俊之」

「今2回迷っただろ?」

「い、いいえ?」

じっとり睨んだ後で

「何だよ。」

「あの部屋、片付けてもいい?」

「え、あれか?めちゃめちゃ汚いぞ?」

「うん、好きなんだよね。配置とか考えるの。」

「勿論、こちらも助かる。」

「やった!」

「何なら、湊の部屋にしてくれてもいいが。」

「…あー、はい。まぁ、いいかな。」

「…何だよ。」

「苦手なんだよね、人と長く一緒にいるの。」

「…つまり?」

「ごめんなさい…私に本妻は無理。いいの、私はこのままで…。」

回りに聞こえるように、大きな声で言ってやった。

「湊!だから、違うっての!やめろよ!」

慌ててキョロキョロする彼に、笑う。

「あはは!」

「お前ねぇ、遊んでんだろ、俺の顔で。」

「私も愛人(ラマン)顔でーす。」

「…愛してる。」

「もう、どこでも言うよね。」

「エンドルフィンのせいじゃないって証明だ。」

「イルカ?」

「……。」

「あ、食物連鎖…上位補食者…」

「…何?」

「いえ、何も。」

「セックスしたら、出るやつだよ。」

「え、食事中に、そんな話?」

「ば!脳内ホルモンだよ!」

「あ、そうなの。」

やだ、勘違い。

ふーん…イルカか。

そういえば、イルカも生殖目的以外でセックスするって聞いたことあるな。

コミュニケーションとしてのセックス。

そうか、高度なコミュニケーションなんだな。

奥が…深い。

< 126 / 146 >

この作品をシェア

pagetop