夜をこえて朝を想う
…真っ直ぐで綺麗な彼女を

こんなにも傷つけた過去の男達に憤りを感じる。

自分にも。

だから、早く…彼女が本来の彼女に戻るように。

甘やかすつもりだった。

「何、食べたい?」

「出世…舟盛りとか?」

「いいね。」

「日本酒。」

「いいね。」

「浴衣。」

「いいね。」

「ぶはっ。」

は?

「何だよ。」

「似合うね。」

「…絶対褒めてない。」

「それも含めて、楽しみ。」

…どれだよ。

「そうだな。」

いいか、もう。

先に宿を予約しよう。

休もう。長らく有給も取っていなかった。

何とか、なる。

まだ、なのか、またなのか…

涙目の湊を抱き寄せる。

泣かせないって誓ったのになー。

「泣き虫。」

「…だってさ、笑わすんだもの。」

…そっちかよ。

で、笑わしたつもりないけどな。

「露天風呂付きの部屋ね。」

「うわー…」

「あんなこと、こんなこと、しような。」

何を想像したのか、真っ赤になった湊に口を付ける。

あちこちに…

「したいなー…でもなー、会う度とか言われるしなぁー…」

「あのねぇ、その一人言…ってか心の声?」

「はは!冗談だよ。」

今日は…これくらいにしておこう。

身体だけ…そう思われるのは本望ではなかった。

それに、なくったって構わない。

翌朝も、居てくれるなら。

俺と。

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