夜をこえて朝を想う
「露天風呂、すっごい良かった~。」

いつにも増して長風呂の湊が帰ってきた頃には、もうすっかり時間を持て余していた。

スマホで“LEON”を検索するほどに。

…嫌だな全く。

建築士か。

そして、ここまで来て…何をしているのだろう、俺は。

部屋食の舟盛り、名物などがテーブルに所狭しと並べられた。

日本酒と。

浴衣と。

まあ、俺の浴衣について、湊は一通り笑い終わって、今は落ち着いている。

何で笑われたのかは、何となく分かる。

日本酒を俺に先に注いでくれ、返杯する。

湯上がり…浴衣…料理に…酒。

いい日だな。

湊と出会った日もそう思った。

湊が横にいる、それだけで…いい日だ。

「…好き嫌いしない。」

ちょこちょこ摘まんでは食べる湊にそう言った。

「だってぇ。全部食べられないから…好きなの先に食べたい。」

「…まぁ、そうだな。湊は。」

夕食が楽しみだからと、温泉まんじゅうも我慢してた。

化粧のない艶肌が…醸し出す色気。

湯上がりに、酒も回って、気持ちも高ぶる。

「…色気が凄いね。」

一瞬、俺が声に出したのかと思った。

「は?」

「ほら、湯上がり浴衣の色気、ヤバい。」

散々笑ったくせに、よく言う。

でも、まぁ…

湊の足元から、手を差し入れ、太ももに這わせる。

固まる湊の耳元で

「後で、な?」

そう言った。

食事を、下げて

布団を敷く。

その作業が終われば…

もう誰も入ってはこない。

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