夜をこえて朝を想う
凄く…いい部屋だった。

オーシャンビュー。

それに…露天風呂。

何と言うか…何と言うか…

照れる。そんな感じ。

きっと奮発してくれたんだろうな…

彼氏と旅行に来るのさえ、初めてだった。

こんなに甘やかされていいのだろうか。

先に大浴場。

お風呂は大好きだ。

全部洗い流せば、スッキリする感じも、温まってる間にボーッとするのも好き。

露天風呂も空いてる。

この時期だからか、貸し切りのようだ。

「露天風呂、すっごい良かった~。」

…だいぶ待たせたかもしれない。

微妙な顔でスマホを弄んでいる彼を見てそう思った。

確かに、男女で温泉に来ても別々になるもんね。

…あ…部屋にあったんだった…

って、浴衣!

浴衣だ。

駄目だ。想像より…

そこから、汗をかくほど…笑った。

ああ、苦しい。

部屋食の舟盛りをメインに沢山の料理が並べられて行く。

日本酒と。

浴衣と。ぶっ、まだ笑っちゃう。

日本酒を彼に注ぐと、私にも注いでくれる。

湯上がり…浴衣…料理に…お酒。

いつも、美味しい物を食べさせてくれる。

お行儀の悪い迷い箸をしていると

「…好き嫌いしない。」

と、注意されてしまう。

「だってぇ。全部食べられないから…好きなの先に食べたい。」

「…まぁ、そうだな。湊は。」

はた、と目が合って思った。

「…色気が凄いね。」

「は?」

「ほら、湯上がり浴衣の色気、ヤバい。」

湯上がりで、乱れたままの髪

袖口が捲られた浴衣。

お猪口というオプション。

うっとり見ていたら

太ももに、彼の熱い手の感触。

固まる私の耳元で

「後で、な?」

そう言った。

…ですから、色気を…しまってください。

食べられなくなるから。

でも…気持ちいいなぁ、彼に触れられるのは。

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