夜をこえて朝を想う
あれから、湊はイタリアだけでなく、度々海外へ行っては、沢山の写真を俺に見せてくれる。

ずっと、したかった仕事だと

楽しそうに毎日を過ごしている。

相変わらず、俺の方も忙しかった。

以前にも増して。

だけど、時間があれば直ぐに会いに行った。

彼女も来てくれた。

同じような毎日を過ごしていたけれど

以前と違うのは、俺のマンションの開かずの間が綺麗になったこと。

湊からも連絡があるということ。

俺から誘っても、断られる日があること。

俺も、湊の家に泊まるようになったこと。

俺を部長と呼ぶ回数が減ったこと。

にっこり笑わずに、大口を開けて笑うようになったこと。

俺が愛を語っても、嬉しそうに笑うようになったこと。

愛されることに…慣れてきたこと。

それに、朝になっても彼女は帰らないこと。

朝だけでなく、昼も一緒に過ごせること。

最近、少しふっくらした彼女は、丸みを帯びて

より一層色気が出てきた。

きっと、エンドルフィンがいい仕事をしているのだろう。

服も、セクシーな物が増えた。

これは海外に行く事の影響だろうか。

「そろそろ、一緒に住まないか?」

「うん、考えとく。」

このやり取りも、もはや定番。

「家でも…建てるかぁ。」

「…中のデザインは私が!」

食い付いてきた。好きなんだな。

「…うん。」

「そのうち…」

そう言って俯く。

まだ、駄目か。

「…そろそろ、一緒に住まないか?」

もう一度繰り返す。

「…囲って下さい。」

「…湊~」

俺達はよく、俺の言葉を“既婚変換”“未婚変換”して遊んだ。

だけど、そろそろ…

見た目通りの妻帯者になってもいいんじゃないかと、本気で思っている。

なのに、その妻が帯されてくれない。

諦めるつもりはない。俺は結構しつこい。

彼女が、その気になるまで。

夜をこえて

朝になっても

朝が

昼になっても

彼女は俺の隣にいる。

そして、それは何度も繰り返される。

何度も、何度も。

数えられないほど。



毎日

夜をこえて

朝が来ても

俺の隣に彼女がいる。

そんな日が来ることを。

綺麗な瞳に、俺への愛を湛えて。

…そんな、朝を想う。

ずっと…彼女と共にいる朝を。

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