夜をこえて朝を想う
夕方、中条さんに電話した。

「ああ、まだ会社?」

「ええ。」

「プライベートなんだ。ちょーっと、人気(ひとけ)のないとこで話せる?」

「すぐ、折り返します。」

そう言って、すぐに折り返してきた。

「明けましておめでとうございます。清水さん。ご挨拶が遅くなって…。」

こういう所、吉良君も中条さんもしっかりしてる。

プライベートとの線引きが。

「いや、はは。おめでとうございます。こちらこそ…。そっちからは吉良君(イケメン)が代表で来てくれたからね。ちょっと、久しぶりだね。」

「本当、ご無沙汰してます。でも、もう1度2人で行かせて頂く事になって…。」

「うん、悪いね、無理言って。覚えの悪い奴ばっかで…」

「清水さんも、お忙しいでしょう?」

「…結構…ね。でも、もう落ち着くよ。…忘れてない?」

「…はい?」

「はは、俺の顔。」

「覚えてます。忘れるなんて…」

「そっち、イケメンばっかだからなぁ…。」

「…清水さんだって…」

「じゃあ、見に来ない?今から。」

「…今?」

「まだ、終わらない?それとも、予定が?」

「…伺います。どちらへ?」

すぐに会うことになった。

待ち合わせ場所。

「ごめんね、急に。」

「いいえ、構いませんわ。」

「今日は、飲める?」

少しくらい飲んだ方が、もう少し入り込める。

「…少し…なら。…あの、暴れたらごめんなさい。」

「あ、そっち系?」

「苦手な物は?」

「ありません。」

「…了解。」

そう言うと、そのまま歩き出した。

「何飲む?日本酒とか、めっちゃ似合うけど。アルコール的にやめとこう。」

そう言って笑う。

「スプリッツァーを。」

「はは、可愛いね。酒豪顔なのに。」

「やめて下さい。」

そう言って赤くなる。

…可愛い。

いや、もうすっかりオッサンだな、俺。

「ちょっとづつ、色々食べたいよね。」

「あ、プライベートだから無礼講で…どう?」

「…いいんですか?」

「ん?いいよ?バンバン来てくれて。部長は、止めてね。」

「じゃあ、今日は…清水。」

「ぶ、わははは!」

本当、中学生みたいだ。ピュアで…

思ってたのと、全然違う。見た目と、仕事モードと。

なるほどね、吉良君。

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