夜をこえて朝を想う
あの後、二人は…上手くいったのかな。

二人とも、前に進んでる。きっと、大丈夫。

そう思っていた。

メッセージを受信して、名前を確認した。

…梓。

ああ、きっと…報告だ。昨日の。

ふっと、笑い

そのままメッセージを夜まで開かなかった。

家に帰ってメッセージを開いた。

『いつも、心配かけてごめんね。本当に感謝してる。だけど…湊を見るのが…辛い。湊は湊の為に…生きて下さい。私の事は、もう心配しなくていいように…私が決めた事だから。今までありがとう。』

ゾクゾクと走る戦慄。

嫌な光景が脳裏に浮かぶ。

寒いか暑いかわからなくなった体から、汗が流れる。

震える手でスマホを持つと…

予感通り…電源が入っていないとのアナウンス。



ああ…

どうしたら。

吉良くん…

ダメだ。

彼は。

彼はもう、頼っては。

終わったのだから、これ以上…

浜川さん。

浜川さんに電話…

遅い時間になっても、彼は駆けつけてくれた。

彼も、何も聞いていない。

そして…

梓の家の鍵を…持っていた。彼は。

それが、何より前を向いている証拠だというのに。

チェーンが掛かっていない。

それは、留守であることを意味した。

ホッとしていいのか、ダメなのか…

浜川さんは、私を家まで送ってくれた。

「明日、明日連絡するから、君も休んで。」

そうは言われても…

休む事も出来なかった。

ただ、無事を祈るだけ。

油断…

油断なのだろうか。

そのまま…会社に行って…

夕方…

音沙汰のない梓に

ダメだと分かっていたが、吉良くんに電話した。

メッセージも。

そして…彼の会社の近くを探した。

彼に何があったのか、あの日…そしたら居場所が分かるかもしれない。

必死だった。

よく覚えてもいない。

梓が無事か。それだけ。

それだけだった。

あの時は。

吉良くんの迷惑も、状況も

考えられなかった。

私の、そんな所が自分でも嫌いだったのに

また、やってしまったのだ。

吉良くんは、誰かといたけど、すぐに来てくれた。

吉良くんの顔を見ると

我慢していたものが溢れた。

「ごめん。吉良くんには連絡…したら…ダメだって…おもっ…で…け…」

「お前、寝てないだろ。」

「寝た。今。」

「起きてるわ。バカ。」

あ、起きてるのか今。

じゃあ、ダメだ。外で泣いては。

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