夜をこえて朝を想う
「梓の会社の方は、浜川さんが探してくれてる。」

「そっか、誰だ?」

「あ、梓の…。」

「家、家行こう。」

それから、梓の家に着くまでに

あの、梓からのメッセージを見せた。

ぼーっとした頭で言った。

「ごめんね、吉良くん。」

「いや、こっちこそ。」

なぜか、吉良くんがそう言った。

梓の家で待つと、夜遅くになって…梓は帰って来た。

「梓!」

身体中の力が抜ける。

「何してんだよ。」

私達を見ると

「入って…。」

そう言った。

「ごめん。」

ただ、一人になりたかっただけかもしれない。

それを、勝手に勘違いして皆を巻き込んで騒ぎ立てた。

それに…

「梓の…負担になってるって…今まで気付かなかった。今日、無事が分かったから…もう。」

立ち上がった。梓とも、もう…

「違うんだよ!湊!いつもいつも私の事ばっかり。幸せになって欲しかったの。私のせいで…湊は彼氏も出来ない!」

梓の大きな声に…逆に心配されていた事を知った。

「いや、それは…梓関係なくない?私の…力量…」

吉良くんが吹き出した。

いや、笑ってくれてもいいけど…私の問題だ。

「私、最優先にしてくれたの知ってる。」

「…予定…なかったから…」

それにも吹き出す。

「もう!湊!!」

「先に幸せになりなよ。梓。だって、私…相手がいないんだよ。梓はいるでしょ?…こんな事…言わせる?切ないわぁ。」

それに、梓が真っ赤になって

吹き出した。

「あ、そうだ。」

そう言ってを電話を掛けた。

もっと、心配している人に。

「あ、もしもし?ええ。家に今…はい。え?はい。」

彼の安堵が電話越しに伝わった。

替わって欲しい。そう言われ、梓に電話を渡した。

「も…あ、はい。ご、ごめんなさい。あ…明日?はい、大丈夫…大丈夫です。」

「ね?」

「うん…。凌くん、私ね…行ってきたんだ。あの…場所へ…私達の…って言っていいよね?思い出の。」

「うん。勿論。俺も…行ってきた。先月。」

吉良くんの言葉に梓はパタパタと涙を落とした。

思い出の場所…か。

私には分からない。

吉良くんが梓を引き寄せ、ゆっくりと

…抱き締めた。

その姿を見て…

私は、その場を後にした。

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