夜をこえて朝を想う
週明け、会社に退職願を出した。

驚かれたけれど。

5月末でと、言われた。

そうでしょうね。

GWもあるし、有給消化で実質4月くらいになるのかなぁ。

やってみたかった事をしよう。

…もうここにも居る必要が無くなった。

それから…気持ちが落ち着いたら、私だけを見てくれる人を、探そう。

ハンカチはいつでも返せるように、持ち歩こう。

彼が、この近くの取引先に来た時にでも。

それでいい。

それが、私の前に進む事だから。

あ…

冷静になって、あの日…吉良くんの元へ行った日の事を思い出す。

吉良くん…の…横にいたのは…あの綺麗な女性。

もしかして…

二人でどこかへ…

約束があった?

なのに…私…

邪魔しちゃった?

誤解…

誤解させたんじゃ…

え…待って。

梓と戻ったにしても、私のせいで彼女を傷つけた事になる…

ああ…また。まただ。私…また…自分の事ばっかり…

吉良くんに謝らないと。

先に返そう。

ハンカチ。

でないと、スッキリしない。

それきりにするつもりだけど…謝罪も…

『取引先に来たとき言ってくれない?ハンカチをお返ししたい。』

そう送ると

『いま、まさにそこだけど?』

すぐに電話を掛けた。

『待ってて~、すぐ行く。』

やっぱり、すぐに返して前に進めってことだ!

よし!

その場所へ急いだ。

あまりにも急いだ物で、男性にぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

そう言うと

「あ、平気です。」

そう言って、笑ってくれた。

もう一度頭を下げて、吉良くんの元へ。

「なんて、ナイスタイミング~!私、持ってるー!ハンカチは持ってないけど、いつも。あ、今日は持ってるよ。」

「ぶ、バカだな、お前。」

「はい、これ…ありがとう。」

そう言って、アイロンを掛けたハンカチを返した。

「どーも。もう、仕事終わり?」

「あ、うん。今日は。」

これで、終わり。

だから、ここで謝罪も…。

そう、思ってた。

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