夜をこえて朝を想う
吉良君と初めて会ったのは…彼が24歳の時だ。

彼の会社の社長に連れられて来た。

彼の会社とは、社長同士の付き合い。

若くして会社を立ち上げた社長が、うちの会社との関係を築いたわけだが…

まぁ、最初は彼の外見。

思わず、同性でも見てしまうほどの。

緊張してもいいくらいの面子の中、若い彼は物怖じすることなく話した。

生意気そうな笑顔、テンポのいい会話。

オッサン達相手にその場に添った冗談なんかも飛ばす。

なるほどね。

そして、そこそこの会社であるうちの担当させられるほど…仕事も出来た。

フットワークも軽い。

聞けば、営業部全員が彼と同い年くらいだという。

…若手の育成。

責任を負わせて、任せる。

そんなスタンスなのか。

でも、人に寄っては潰れるけどね。

潰れない人選ってやつか。

うちの会社みたいに、数いりゃあいいもんでもないしな。

ほら、また無駄な奴があの辺で喋ってる。

「見た?」

「見た見た!ヤバい!!めちゃめちゃイケメン。…そして、色々上手そうよね。」

「バカだね~、あんた。」

「遊ばれてみたーい。」

「年下だよ、あれ。」

「…教えてあげたい?」

「教える前に、知ってんでしょ、全部。」

…頭痛い。

どうなってんだ。全く。

何度か来るうちに、随分と打ち解けて

そのうち、食事でもと、誘った。

「いいんですか?うちの方がお願いする立場なのに。」

奢ると言った俺に、そう言った。…こんな若いのに、出させるわけにもいかないだろ。俺から誘っといて。

「いいんだよ、今日は。プライベートだ。」

「じゃあ、遠慮なく。お返し出来るくらい、頑張らせて頂きます。あ、プライベートでしたね。」

そう言ってニッと笑う。生意気な笑顔で。

この歳で、これくらいだと

挫折なんて知らないんだろうな。

全くもって、欠点などないような男だ。

プライドも高そうだしな。

そう思った俺の、その考えを覆すように

彼はいとも簡単に自分の弱点(ウィークポイント)を俺に晒した。

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