夜をこえて朝を想う
「次は何?」

「あの日…吉良くんあの綺麗な人と居たよね。それなのに、私…」

「誤解、させたと思う。約束…あったんだよね。吉良くんの予定も確認せずに…ごめんなさい。」

「…いいんだ、もう。」

“もう”って言った。

じわりと、涙がまた出てくる。

「ねぇ、それって…。」

せっかく、前を向けたのに、私のせいだ。

「まぁ、そうだな。」

「もし、二人が元サヤってたら…私は梓の友達だからさ、良かったと思うんだけど…でもあの彼女には申し訳なかったと…思ってたの…私が、その…引き合わせちゃったし。」

「前を向いてるって言っただろ?お互い。」

「男女の事は…よく分からないから…吉良くん…抱きしめ出すし…」

「バグだよ。ただの。湊にもしよっか?」

されて、たまるか。

「イタリアン!」

「イタリア人ってそうなの?」

「シラン!」

茶化すしか、術がない。

バレるわけにはいかない。

今日で、最後なんだから。

「でも…やっぱり、私のせいだよね?誤解しちゃうよね。約束してたのに、私の方へ…。あんな美人とは言え、よくよく考えたら美人置いて、案山子の様な私の方へ来るわけないのに。」

「何だ?案山子って。」

「え?あんな美人見た後だと、へのへのもへじに見えるでしょーが。」

吉良くんが吹き出す。

「いや、お前も匹敵するくらい美人だろ!」

「吉良くんって、だて眼鏡なの?」

「…俺…メガネかけてないの、分かる?」

あ、ほんと、掛けてなかったわ。

だけど…だけど、溜め息が出る。涙も。

「そういう所がダメなんだよね。いつも…誤解させちゃって…私のせいで。ごめんなさい。嫌な思いを…人に…」

「湊、別に湊のせいじゃない。誤解を解けなかったのが悪いんだ。いいか、お前のせいじゃない。今回も、これまでだって。」

吉良くんは、そう言ってくれる。

優しい人だから。

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