夜をこえて朝を想う
「結局、誤解だの何だの…二人の問題で…今回で言えば…向き合って、とことん話し合って…そうしたら解けるんだ。誤解である限り。話し合わなかったのが原因で、お前のせいじゃない。」

彼の言葉に顔を上げた。

「いくらでも解いてやる、誤解なら。だから、気にするな。例えば、上手くいかなくたって湊のせいじゃない。むしろ、湊のせいにするのは…情けないと思うから…止めてくれ。」

彼の、力強い言葉は…私の心を少し…軽くしてくれた。

そう言ってくれた彼の為に、泣くのは止めて、笑った。

「ありがとう。優しいね。」

「惚れないでね。」

「あー…私…親友の元カレとか…無理なんだよね。」

そんな、私の心の中を見透かされないように

また…笑った。

「湊も、今からだな。」

「そうだね。婚カツでもするか。」

「いきなり飛ぶよね。」

「脱皆川作戦。」

「いいねー。ま、すぐ見つかるだろ。」

「かるーい。」

きっと、心配もされてないな。

でも、それでいい。

「あ、そうだ。私…来月で会社辞めるの。」

実質ね。再来月だけど。だから、会うこともない。もう。

あ、ハンカチ返すからあと1回か。

「そう…なんだ。」

「梓もいないしさ、この場所に拘る事もなくなったし…インテリアとか空間の仕事したくて…海外でも行こうかな。色彩感覚が…全然違うもんね。」

「…日本離れんの?どこに…」

「イタリア!」

「言いたいだけだろ…」

「あはは、バレた?でも…うん…どこかへ…」

まだ決めてないけど、どこか遠く。

教えるつもりもない。

「教えてね、ちゃんと。」

え…

「それって…プロポー…」

「違う!」

また、茶化す。

「あはは!」

「友達だろ?」

元カノのね。

「…うん。また、連絡する。」

「絶対な。」

「ハンカチ…洗って返すね。」

「本当だよ!」

「もう、泣かないから。これ返したら最後!」

会うのも。最後。

むしろ、会うのが、か。

「持参!」

「イケメンこわーい。」

こんな反応しか出来なかった。

だけど…精一杯だった。

私には。

でも、もうひとつ…

私にはしないといけない事があった。

それこそ、余計なお世話かもしれないけれど。

そうしないと、私の気が済まないから。

ここに居たら会えるだろうか、それとも…

向こうまで行こうか…。

そう、思ってた。

最後の、一仕事。

< 42 / 146 >

この作品をシェア

pagetop