夜をこえて朝を想う

「さすがに、下着は恥ずかしいだろうから止めとく。帰る頃には戻って来てるよ。」

そう言うと、彼女をテーブルに着かせた。

「まだだろ？食事。」

「はい…。」

「食べたら寝ろ。何も考えずに。朝まで居てやるから。」

そう言った。

「言っとくけど、一番良い部屋じゃないからね。」

部屋を見回していた、彼女にそう言った。

「…でも…。」

「食べなさい。」

言われるままに…口を付ける。

「…美味しい。」

そう言うと、またパタパタと…彼女の目から水分が落ちた。

重症だな。

彼女にバスタオルを巻き付けた。

「ごめんなさい、俊之さん。」

「聞き飽きた。」

「お世話になります。」

「それは、仕事で聞くやつだな。」

「部長…。」

「ここで、部長って言うなよ。」

何だよ。

少し笑った彼女の口に、スープを入れた。

「笑えるなら、大丈夫。後は…食べて寝る。」

そう言うと、頷いた。

「考えなくて、いい。」

彼女にそう言った。

今、俺の事を考えてる場合じゃないし、これ以上悩みを増やしたくない。彼女の。

「考えなくていいんだ。俺の事は。」

「…でも。」

「俺が、そうしたいから、そうした。考えて欲しい時は、そう言うしね。」

「ありがとう。」

「うん。」

「せめて…自分で…。」

「ああ、大丈夫。俺、“部長”だから。」

払わせるわけ、無いだろ。

俺の微笑みに

「ちょい悪、オヤジ。」

と、言いやがる。

「君ねぇ…」

まぁ、冗談が言えるならいいか。

「格好くらい、つけさせてね。」

そう言うと、ルームサービスを下げるのにスタッフを呼んだ。

「さ、歯磨きして、寝る！」

そう言って歯ブラシを渡した。

そして、空気を変える為に。

「じゃんけんだな。」

「え？」

訳も分からず、じゃんけんすると…

俺が、勝った

「俺こっちね。」

そう言って、片方のベッドを指した。

「じゃ、俺も風呂。…お休み。襲わないでね。」

そう言って、彼女の髪にそっと触れた。

うーん…なかなか…損な仕事だな、これは。

だけど、他の男を想って泣いてる女をどうこうする趣味はない。

虚しくなるだけだ。

そう、お互いに。

それに…

彼は“俺と関係”があった女は無理だしね。

止めといてやるか。