夜をこえて朝を想う

「全部、全部解決しました。」

そう言うと、彼女は意味を理解したのか…少し

微笑んだ。

「じゃあ、彼は…」

「ええ、晴れて、身も心もフリーです。」

「じゃあ、あなたと？」

……

「はい？気にするに値しない…と、言いましたけど？」

「だって、とってもお似合いで。き、綺麗だし。」

「鏡ってご存知です？」

「え？鏡？ええ。」

「出して下さい。」

「え？ええ。」

そう言って、小さな鏡を出した。

さすが、持ってらっしゃる。

「見てください。鏡。何か映ってますか？」

「私…何かついてます？」

「ええ、非常に整った美しいパーツが。」

「……。」

「いいですか？今、あなたが見たものが“美人です。”私ではありません。」

「ええ！？」

「お似合いですよ、あなたの方が。」

「私…」

「それに、私…友達の元彼とかムリー。」

胸の前で大きく、バッテンを作った。

彼女は吹き出して笑ってくれた。

「吉良くんのスケッチブックに…あなたの絵があったもので…すっかり…。」

「ああ、待ち時間暇だったので書いてもらいました。5分位でサッと描けるんです。あの人。器用ですよね、他の子も描いて貰ってましたよ。見ました？」

私など、5分もかからずに描いてた。

大した意味などない。

「…他の人…も？いいえ。」

「あのスケッチブックは、誰かが貰って…今のは何描いてるのかなぁ？見せて貰って下さいね。」

わざと、そう言った。

私の絵だけ見たのか。一番、どうでもいい絵を。

「という、次第。あ、ケーキ…食べません？」

「食べようかな。」

吹っ切れたような、彼女の顔。

来て、良かったなぁ。

「あの…吉良くんには、秘密にしてもらえません？私が話した事。」

「ええ、もちろん。ありがとう。」

「これで私も…お役ごめんです。あ、これ美味しそう。」

「ね、迷っちゃう。」

「あ、お名前聞いても？」

「中条麗佳です。」

名前！！名前も美人だ！！

「私、皆川湊です。彼氏募集中です。」

「ええ！？そんなに綺麗なのに。」

「ほら！鏡！」

「湊ちゃんこそ、見なさいよ。」

「鏡とか、持ってない。」

はい、女子力の完敗。

女子力以前に完敗。

いや、勝つ気もないし

同じ土俵にあがれません。

「鏡は持っときなさいよ。」

その通りです。

「ハンカチは？」

「ハンカチも必需品。」

「ですよね。」

気が合いそうな人だ。

…吉良くんと。

「半分こ、しない？」

「いいわね、狙ってたの。」

「ハンターだね。」

「今年は、肉食でいこうと思って。」

肉食？ハンター食べる為に仕留めるんだ。

「私も誰か…。」

「あ、いい人いるんだけど…」

「次はイタリア人って決めてるの。」

「なぜ、イタリア人なの？」

「情熱的だから。」

「イタリア人ってそうなの？」

「知らない。」

「……。ぷっ。」

そこから、二人で笑った。

「吉良くん、イタリア人ぽいよね。」

「イタリア人ってあんなの？」

「知らない。」

「もう！言いたいだけでしょ。」

うん、気が合いそうだな。

吉良くんと。

お似合いだ、とても。