夜をこえて朝を想う
金曜日
ハンカチを持って、あのワンピースを着て、いつもよりしっかりとメイクをして。もちろん、アイメイクも。
待ち合わせに向かった。
コートを脱ぐつもりもないし、ハンカチを返す一瞬だけど、自分の為に。
彼の姿が見えると
「吉良くん!」
そう呼んだ。
呼んでから、慌てて口を覆った。
どなたかと、一緒だった。
「あ…湊…」
その人に軽く会釈をすると、ハンカチを手渡した。
「ありがとう。これ…。」
「うん。あ、俺…今から行かないといけないんだ。…その」
「うん、いってらっしゃい!」
笑顔でそう言うと
「ああ、じゃあな!湊、また!」
それから
「清水部長!失礼します!」
その人にそう言って…
それはもう、春の疾風より早く走って行った。
…彼女の…麗佳さんの元へ。
「やだ、あの人、足も速い!手も早いんだろうけど…格好いいだけじゃないのね。」
本当、格好いい。
そう言うと、横にいた彼が吹き出した。
あ…まだ、いらっしゃったんだ。
街灯の下、仄かに照らされたその人は…
背も高く、うん、素敵な人。
「本当…そうだね…。えーっと…湊さん?君は…いいの?」
「ええ、ハンカチを返すだけでしたので。清水部長。」
そう言うと、彼はまた笑った。
「えっと…彼とは?」
「大学の同級生です。清水部長は?取引先の部長さんですか?」
「そうだね、ここ。」
そう言って、目の前のビルを指差した。
大きな…会社の…部長さん…か。
「この後の、ご予定は?湊さん。」
「…ありません。」
「…食事、付き合ってくれると…嬉しい。」
「わ!いいんですか?嬉しい。ちょうど、そんな気分で。」
ストレートなお誘いに頷いた。
吉良くんの知り合いだし、大丈夫よね。
それに…ちょっとだけ、真っ直ぐ帰りたくない気分だった。
店に着くまでの間も、彼は冗談なんか言って
退屈しなかった。
店に着くと、横並びの席に座った。
顔を見て話すとなると、結構近い。
あ…思ったより…
若い?
「あら、さっきは暗かったから…もしかしてって思ってたんですけど…ハンサムですね!ラッキーだわ、私。」
切れ長の、色気のある目。
整った鼻筋、少し大きめな情の厚そうな唇。
“抱かれてみたい”とか言われそうな、男らしい体格に…
温厚な話し方。
モテそうな人だなぁ。
そして、私も…凄くタイプだ。
格好いい。
吉良くんの美しい格好よさとはまた別の…
ハンカチを持って、あのワンピースを着て、いつもよりしっかりとメイクをして。もちろん、アイメイクも。
待ち合わせに向かった。
コートを脱ぐつもりもないし、ハンカチを返す一瞬だけど、自分の為に。
彼の姿が見えると
「吉良くん!」
そう呼んだ。
呼んでから、慌てて口を覆った。
どなたかと、一緒だった。
「あ…湊…」
その人に軽く会釈をすると、ハンカチを手渡した。
「ありがとう。これ…。」
「うん。あ、俺…今から行かないといけないんだ。…その」
「うん、いってらっしゃい!」
笑顔でそう言うと
「ああ、じゃあな!湊、また!」
それから
「清水部長!失礼します!」
その人にそう言って…
それはもう、春の疾風より早く走って行った。
…彼女の…麗佳さんの元へ。
「やだ、あの人、足も速い!手も早いんだろうけど…格好いいだけじゃないのね。」
本当、格好いい。
そう言うと、横にいた彼が吹き出した。
あ…まだ、いらっしゃったんだ。
街灯の下、仄かに照らされたその人は…
背も高く、うん、素敵な人。
「本当…そうだね…。えーっと…湊さん?君は…いいの?」
「ええ、ハンカチを返すだけでしたので。清水部長。」
そう言うと、彼はまた笑った。
「えっと…彼とは?」
「大学の同級生です。清水部長は?取引先の部長さんですか?」
「そうだね、ここ。」
そう言って、目の前のビルを指差した。
大きな…会社の…部長さん…か。
「この後の、ご予定は?湊さん。」
「…ありません。」
「…食事、付き合ってくれると…嬉しい。」
「わ!いいんですか?嬉しい。ちょうど、そんな気分で。」
ストレートなお誘いに頷いた。
吉良くんの知り合いだし、大丈夫よね。
それに…ちょっとだけ、真っ直ぐ帰りたくない気分だった。
店に着くまでの間も、彼は冗談なんか言って
退屈しなかった。
店に着くと、横並びの席に座った。
顔を見て話すとなると、結構近い。
あ…思ったより…
若い?
「あら、さっきは暗かったから…もしかしてって思ってたんですけど…ハンサムですね!ラッキーだわ、私。」
切れ長の、色気のある目。
整った鼻筋、少し大きめな情の厚そうな唇。
“抱かれてみたい”とか言われそうな、男らしい体格に…
温厚な話し方。
モテそうな人だなぁ。
そして、私も…凄くタイプだ。
格好いい。
吉良くんの美しい格好よさとはまた別の…