夜をこえて朝を想う
まぁ、彼女の性格からして…そんなにすぐに結果を出して来るとは思わなかったが…

商談ルーム。座っている俺に、物凄い緊張した顔を向けた。

なんだそれ。思わず笑った。

「あはは、そんなに緊張しなくても。一晩泊まった仲だろ?」

「ちょっと、もう…聞こえたら…!」

「困る?」

見られてたとなると…もっと困るよね。

「…先日は。申し訳ありませんでした。ああ、もう顔から火がでそう!」

慌ててそう言う。

どうやら、誤解も…解けてないな。

「進捗…楽しみにしてたんだけど、その調子だと…まだだね?俺…気短いんだよねー。」

書類の束に目を通しながら、そう言った。

「最短で…。」

「聞いていいかな?」

「何なりと。」

「何に、躊躇してるの?」

「…彼に好きな人が。」

「そらまぁ、いるんじゃない?…俺、知ってるって言ったよね。」

「ええ…。」

「俺は、君が好きなのは誰か知ってたけど。

それでいて、伝えたんだよね。」

「…彼…私と約束している日…その前で、他の女性の方へ…走って行ったんです。」

……。何をしてるんだ、彼は。

ああ…でも…もしかして、過去ってヤツなのか?それが。

「それに…」

「君も、その日に俺のとこに来た。」

「でも、何も…」

ないとは、思ってない。思わないだろうな。

「俺がしなかっただけ。だろ。」

「…それは…」

「聞けよ。」

「な、何て?」

「誰よ、あの女!って。」

「あはは、修羅場みたいね。」

「向こうも、何もなかったかもしれないよ。」

というか、ない。絶対。

誤解×誤解か。

拗れるなぁ、これは。

「だとしても…」

「聞いて下さい。本人に。…さて、仕事。」

「あ、はい。」

慌てて彼女も書類に目を落とした。

「結果主義です。俺。結果出して下さい。…本人と来てくれてもいいけど?」

もう、二人合わせて俺が説明してやろうか。

プライベートで。

「もう、同行はなくて…。」

「分かってるわ!」

ここで、するわけないだろ…。

もう、してるけど。

“公私混同”

まぁ、麗佳から説明すればいい。

彼女は嘘をつけない。

そんな、彼女が紡ぐ言葉は…彼に響くだろう。

きっと、俺が出る幕もない。

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