夜をこえて朝を想う
そう思っていたのに…次の週。

何となく、話をしたい彼女の雰囲気に…

「で?今日忙しいから、手短に聞くわ。」

「思いは伝えました。」

「で?」

「…ごめんって…」

ごめん?

「それは…。」

なぜだ。

「あ、でも…私やっと皆や俊之さんのアドバイスの意味が分かって…その話をもう一度…彼に…誤解…誤解ではないのだけど…」

ああ、話してないのか。

誤解ではない?何もなかったのだから、誤解だ。

どういうつもりであれ、結果として何もなかったのだから、誤解だ。

「誤解だよ。麗佳。誤解だ。」

「でも…。」

「時には、何もかも正直に言わない事の方が優しい時もある。」

特に、彼のようなタイプは。

「でも…。」

「総称して、誤解って言うんだよ。」

「…そう…なの…かしら。」

「そうだ。俺の方が長生きしてるんだ、経験も豊富、間違いない。な?」

「ええ。」

「次!次は頼みます。」

「はい!」

「…ところで…」

「はい?」

「その髪型いいね、綺麗だ。」

彼女は珍しく、ゆるく、髪を上げていた。

「ありがとうございます、清水部長。あなたも素敵です。今日も。」

にっこり笑ってそう言った。

綺麗だな、うん。

そして、本当にそう思ってくれているのも。

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