夜をこえて朝を想う
会社に特に貢献してくれた人にインセンティブ。

皆の前で拍手を受け、受け取った。

白い封筒に、入った物を。

「社員のモチベーションを上げるために、こういうのもいいかなと、思ってね。今回は、彼だけど…皆も、続くように。」

なんて、名目だけど…

日付指定の宿泊権利。

…しかも、明日ときたもんだ。

…しかも、そこのホテル。

何が悲しくて、会社の近くに泊まらなきゃならんのだ。しかも、金曜日に。

せめて、リゾートとか。休日にしてくれよ。

分かってる。なぜ、インセンティブとか(てい)の良いことを言って渡してきたのか。

接待用に取ったホテルが、先方の都合によりキャンセルになったから。

しかも、急に。

キャンセル料金がほぼかかる。

予約は会社名義。社員なら問題ない。

…無駄にしたくない。それだけの事だ。

じとっとした俺の視線を逸らしながら

「まぁ、そういうことだ。…君ならお相手の1人や2人いるだろう?楽しんでくれ。」

…楽しめる訳ないだろう。

相手もいないのに。

振られた相手と泊まった所だっていうのに。

あ、でもあの部屋より、だいぶいい部屋か。

じゃあ…

あげてもいいな。

あの2人に。

タイミングの良い事に、明日…来るじゃないか。

まだ拗れてるのか、拗れてないのか知らないが。

どちらにせよ、そうしよう。

プライベートでの、彼らが並ぶ姿が見られるぞ。

ほんの少しの、楽しい企み。

明日が、楽しみだ。

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