夜をこえて朝を想う
ホテルのスタッフと話す彼を見ていた。

「清水様」

そう呼ばれた彼は、顔見知りのようだ。

慣れているのだろう、ここに…来ることも。

部屋に入ると、窓の方へ。

凄い。窓の外を見ながらジャグジーの付いたお風呂に入れるんだ。

あ、でも外から丸見え…

そんな私の顔見て察したのか

「外からは見えないガラスになってるんだよ。」

そう言った…。

来たことがあるのは…分かってる。

考えない、考えない。夢だから。夢。

「でも、部屋からは見える…」

つまり、お風呂入ってる姿を見られるよね。

「どのみち、見る事になるんだ。」

背後から、ゆっくりと私を包みながら…耳元でそう言った。

「いっそ、一緒に入る?」

たくましい腕に抱かれ、顔だけ後ろに振り返るように向けると

ゆっくりと唇が合わされる。

そのまま、彼の手が、指が、身体のラインを下りていく。

ワンピース…って…脱がされると、すぐに下着姿になってしまう。

コートも…まだ…

そう思っていたら、彼の手が止まった。

同時にキスも。

「湊、彼氏いる?」

は?

「いたら、ここには…。」

「あー、うん。いいんだ。」

そう言って、再び唇を合わせてきた。

どちらでもいいんだ。

いても、いなくても。

考えない。考えない。

頭の中で何度となく、呪文のように繰り返した。

夢の中にいるっていうのに、次第に苦しくなるようで…

そんな、私に再びキスを止めると

「座ろう。」

そう言って、窓際に腰かけた。

コートも脱いでなかった。

自分のコートと、彼のスーツの上着を掛けると

「おいで。」

彼に言われるままに、横に座った。

「…今頃あの二人も…」

思わず言ってしまって、二つの後悔。

少しの胸の痛みを思い出した事。

それに…今から私達がすることを彷彿と…させてしまった事。

「俺に、付いてきたのは?」

「え?」

「何があったか。…うーん…あの吉良君(イケメン)?」

突然で、うまくかわせなかった。

「はは、君もかぁ。」

“君も”…それは…麗佳さんのこと?

それとも…

「いいえ。私は…」

そこまでの気持ちは…そう言いたかった。

優しい眼差しで、私の、髪を梳いた。

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