夜をこえて朝を想う
早朝。まだ起きるには少し早い。

また、か。

前回同様、俺の横に気配はなかった。

ベッドの端に腰掛け、後ろ手にホックを止めるその姿は…

何ともセクシーだな。

「何?また、帰るの。」

俺が声を掛けると、驚いて振り向いた。

「…あ…だって、下着…」

「ああ、気持ち悪い?」

頷く彼女に

「送る。」

そう言った。

「いい。明るくなってるし、電車も動いてる。送ってると遅刻しちゃうでしょ。部長。」

そう言って笑う。化粧の落ちた顔。

…化粧ポーチも持ってなかった…な。

まあ、少し幼く見えるその顔も…

綺麗だ。

「…今月はちょっと忙しいけど、時間作るから。」

そう言った俺にキスをくれる。

「うん、連絡待ってる。」

そう言って帰って行った。

多少の寂しさはあるが…

俺もシャワーを浴びるのに立ち上がった。

思ったより、サッパリしてるな。

大人ってこんなものか。

…だけど、浮かれていたのだと思う。

彼女が、手に入った事に。

いつでも会える。

そのことに。

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