夜をこえて朝を想う
第15話

side M

週末、何とか引っ越しを終えた。

というか、運んだだけだけど。ベッドと最低限の服と…冷蔵庫、それだけは何とかして後はゆっくり、有給消化中に片付けよう。

新しい家は快適だった。…少し広くなったし。どう片付けるか楽しみでもあった。

それに、彼の家から遠い。

会社も遠くなっちゃったけど、あと少しとあれば何とかなる。

(みな)さん、これからどうするんですか?」

後輩の二宮くんがコンビニでそう聞いてきた。

「建築系のデザイン事務所行くの。ユニコーポの高木さんの紹介。」

「いいッスね。やりたいって言ってたやつだ。」

「うん、楽しみ。」

「5月はほぼ来ないの?」

「そうなるね。もう、引き続きもほぼ終わるしね。手空くから、新卒フォローしようかと思ってる。」

「…彼氏、いないんですよね。」

「…え…ああ。何?」

私は、あの人を彼氏だと思っていなかった。

じゃあ、何かと言われたら…

「どっか、行きません?休みにでも。」

「何それ、口説いてる?」

「そうですけど。」

「あはは!コンビニ(こんなとこ)で?」

コンビニ(こんなとこ)でしか、話聞いてくれないくせに。」

「二宮くん、彼女いるの?」

「はあ!?いませんよ。」

「独身?」

「そりゃ、そうでしょ。」

「なるほど…そっか。年下だとまだまだ未婚の確率の方が高いか。」

これから、年下狙えばいいのか。

1つ2つなら変わらないし、社会人であれば問題ない。

そう思いながら、外へ出た。

いつかの…デジャヴ。

「や、お疲れ様。」

「やだ、ビックリした。休憩ですか?」

「ああ、君は?」

「戻るとこです。」

二宮くんが出て来て、彼にぺこりと頭を下げた。

「…えっと…」

「うん、また連絡する。」

そう言うと、彼は会社の方へ帰って行った。

「お知り合いですか?」

「うん、この近辺の会社の…部長さん。」

「へぇ、男前ですね。」

「はいはい、君もね。」

「口説いてます?」

コンビニ(こんなとこ)では口説きませーん。」

二宮くんが、おしゃれなメガネ越しに意味深な目を向けて、笑った。
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