夜をこえて朝を想う
「皆さん、暫く俺と一緒に外、出て。」
二宮くんの言葉に
「何で?」
「…アイツ、いたよ。たぶん、探されてる。」
「…嘘。」
今さら何の用なのだろうか。
話…なんて。
身勝手過ぎる行動に嫌悪感しか抱けない。
どのみち、ここに来ることも減る。
そのまま諦めるだろう。
そう思っていた。
清水部長は、それから…割りと早いスパンで電話を掛けてきた。
おそらく、家が近いということで、遠慮が無くなったのだろう。
正確には、近かった、だけど。
「…湊、何か疲れてるのか?」
「え?そうかな。」
「…違うのか?」
顔を近づけて、伺うように見る。
…優しい目で。
「忙しいからなぁ。最近。」
「そうか、じゃあ…元気出るように、しっかり食べろ。」
そう言って、じゅうじゅう焼けたお肉をどんどん私のお皿に入れていく。
「やだ、そんなに食べれない。」
「太れ、ちょっと。もう、痩せるような事はないんだろ?」
…あの男の事など話しても仕方がない。
彼も…状況は似たようなものだ。
「…そうだね。デザートまで食べようかな。」
そう言って笑った。
彼は完璧な人だった。
頼りがいもあって
優しく包み込むような…それでいて、甘やかし過ぎず、自由にさせてくれるような。
…そして時々…母性本能を擽るような可愛さもある。
上手いな。人の気持ちを掴むのが。
この人を好きにならない女なんて、いないだろう。きっと…。
「そういえば、吉良くんとは仲いいの?」
「そうだな、まあ…。」
「会社、来てるんだよね。」
「ああ、今日は…彼じゃなかったけどな。」
「…麗佳さん?」
「あ、知ってるのか。」
「うん、前に会った事が。すっっごい美人だよね。」
「はは、そうだな。確かに。」
「吉良くんも、麗佳さんも、すっっごいもんね。見た目。部長の会社でもモテてたりしないの?」
あれほどの…人達なら目立つだろう。
何気に聞いた。
なのに…微妙な…
あれ?
「清水部長…も?」
「え、ああ。昔ちょっと、な。」
…吉良くんと、付き合う前?
私の顔がよっぽどだったのだろう
「綺麗だなって、思ってただけだよ。」
そう言った。
…何かあったのではないと思う。
けど、好きだったのかな…たぶん。そんな、気がした。
「面食いだなぁ、吉良くんも清水部長も。」
「それは、湊の事も含めて?」
イタズラっぽく笑う彼に…なぜか笑えなくなって
目の前が滲む。
「え?湊…」
「煙い。ちょっと、それ焦げてるんじゃない?」
「ああ、悪い。」
「本気の時だけ面食いか。」
「え?」
案山子だ
案山子みたいな物だ。
私の顔なんて。
「今度、金曜日…早く帰れるようにする。泊まって…そのままどこか出掛けようか。土曜日。…準備持って来て。」
いつも、翌朝に仕事のある平日しか会った事がなかった。
土曜日か…。
…だけど
その前の金曜日、金曜日で9回目。
そうだ。最後の…9回目の約束だった。
二宮くんの言葉に
「何で?」
「…アイツ、いたよ。たぶん、探されてる。」
「…嘘。」
今さら何の用なのだろうか。
話…なんて。
身勝手過ぎる行動に嫌悪感しか抱けない。
どのみち、ここに来ることも減る。
そのまま諦めるだろう。
そう思っていた。
清水部長は、それから…割りと早いスパンで電話を掛けてきた。
おそらく、家が近いということで、遠慮が無くなったのだろう。
正確には、近かった、だけど。
「…湊、何か疲れてるのか?」
「え?そうかな。」
「…違うのか?」
顔を近づけて、伺うように見る。
…優しい目で。
「忙しいからなぁ。最近。」
「そうか、じゃあ…元気出るように、しっかり食べろ。」
そう言って、じゅうじゅう焼けたお肉をどんどん私のお皿に入れていく。
「やだ、そんなに食べれない。」
「太れ、ちょっと。もう、痩せるような事はないんだろ?」
…あの男の事など話しても仕方がない。
彼も…状況は似たようなものだ。
「…そうだね。デザートまで食べようかな。」
そう言って笑った。
彼は完璧な人だった。
頼りがいもあって
優しく包み込むような…それでいて、甘やかし過ぎず、自由にさせてくれるような。
…そして時々…母性本能を擽るような可愛さもある。
上手いな。人の気持ちを掴むのが。
この人を好きにならない女なんて、いないだろう。きっと…。
「そういえば、吉良くんとは仲いいの?」
「そうだな、まあ…。」
「会社、来てるんだよね。」
「ああ、今日は…彼じゃなかったけどな。」
「…麗佳さん?」
「あ、知ってるのか。」
「うん、前に会った事が。すっっごい美人だよね。」
「はは、そうだな。確かに。」
「吉良くんも、麗佳さんも、すっっごいもんね。見た目。部長の会社でもモテてたりしないの?」
あれほどの…人達なら目立つだろう。
何気に聞いた。
なのに…微妙な…
あれ?
「清水部長…も?」
「え、ああ。昔ちょっと、な。」
…吉良くんと、付き合う前?
私の顔がよっぽどだったのだろう
「綺麗だなって、思ってただけだよ。」
そう言った。
…何かあったのではないと思う。
けど、好きだったのかな…たぶん。そんな、気がした。
「面食いだなぁ、吉良くんも清水部長も。」
「それは、湊の事も含めて?」
イタズラっぽく笑う彼に…なぜか笑えなくなって
目の前が滲む。
「え?湊…」
「煙い。ちょっと、それ焦げてるんじゃない?」
「ああ、悪い。」
「本気の時だけ面食いか。」
「え?」
案山子だ
案山子みたいな物だ。
私の顔なんて。
「今度、金曜日…早く帰れるようにする。泊まって…そのままどこか出掛けようか。土曜日。…準備持って来て。」
いつも、翌朝に仕事のある平日しか会った事がなかった。
土曜日か…。
…だけど
その前の金曜日、金曜日で9回目。
そうだ。最後の…9回目の約束だった。