夜をこえて朝を想う
第16話

side S

「…彼氏、いないんですよね。」

昼休み、何となく湊と会ったコンビニへと向かう事が多くなった。

もっと近いコンビニもあったが。

湊を、見つけて近寄ると、連れがあった。

その男の言葉、その後の湊の返事に

暫し静止した。

いない?

「…え…ああ。何?」

否定も、しない。

「どっか、行きません?休みにでも。」

「何それ、口説いてる?」

「そうですけど。」

「あはは!コンビニ(こんなとこ)で?」

コンビニ(こんなとこ)でしか、話聞いてくれないくせに。」

……ああ聞かない方が良かったな。

「二宮くん、彼女いるの?」

「はあ!?いませんよ。」

「独身?」

「そりゃ、そうでしょ。」

「なるほど…そっか。年下だとまだまだ未婚の確率の方が高いか。」

彼の好意を流したのか、冗談だと思ったのか。

…それとも…

先に出て、以前のように外で待った。

「や、お疲れ様。」

「やだ、ビックリした。休憩ですか?」

「ああ、君は?」

「戻るとこです。」

彼女がそう言うと、先ほどの彼が出て来て、俺に頭を下げた。

「…えっと…」

「うん、また連絡する。」

そう言って会社の方へ戻る道を歩いた。

若いな。

それに…うん、イケメンだな。

他の男と話す湊は…

楽しそうに、声をあげて笑い…

何だか他人のようだった。

俺と会っていない時は、何をしているか

そんな事…考えもしなかった。

俺が知ってる湊は…

案外、知らなかった。

仕方がない。

あれだけ美人ならモテもするだろう。

彼女は、まだ若い。

俺たちだって、まだ…

日も浅い。

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