時代を超えた件ー乙女ゲームは安全圏内からしたかったー
「ちょっと君大丈夫!?」
うぉぉっと雄たけびを上げる鈴におずおずと手を伸ばしつつ沖田は目を白黒させる。隣で鈴の奇行を見ていた斎藤も、無表情だが何処か驚きが見え隠れしていた。
「おい大丈夫か。総司、頭を診てくれる医者は近くにあっただろうか」
「一君も結構言うよね」
「何のことだ??」
「いや、別になんでもないけど」
本人はそんなつもりはないのだろうが、斎藤がナチュラルに鈴をディスる中。散々叫んだ鈴は、ピタリと叫ぶのをやめた。
「……スッキリした」
思いっきり叫んだ鈴は、先ほどより良い顔色になっていた。これは一周回って冷静になっている状態で、簡単に言うともうどうでも良くなってきたのである。
「まじ怖いの勘弁して欲しい。また闇鬼が出たら、総司さん盾になってくださいね」
吹っ切れてしまった鈴は、グッと親指を立てた。彼らの後ろをついて回ろう、そうすればきっと大丈夫という意味不明な答えに辿りついた鈴の豹変っぷりに、再び沖田と斎藤は絶句した。
「一君、この子ここに置いていかない??」
「置き去りダメ絶対ッ!!」
彼の表情から割りと本気で斎藤に提案する沖田の腰に引っ付く。鈴にとって彼らから離れるのは現時点で生死にかかわるとんでもなく危険な行為なのだ。
絶対に引っ付いて離れはなしない。固い意志で鈴はしがみ付く手の力を強めた。
「わかったわかったよ冗談だってば」
沖田はうっとうしそうに、鈴の手から逃れようと必死に抵抗する。が、思うように抜け出せず降参だよと沖田は白旗を揚げた。