時代を超えた件ー乙女ゲームは安全圏内からしたかったー
腕を引かれるままについていく。屯所までの距離はそれほどなく、しばらく歩けば【新撰組】と大きく書かれた板が引っ掛けられた建物が現れた。
門の両端には、見張り役だろう隊士が二人が背筋を伸ばして立っていた。
二人の隊士は総司と一を見て、キレッキレな動きで頭を下げた。なんだか体育会系を彷彿とさせる。
「見回りお疲れ様です!!」
「君たちもご苦労様」
二人の声は幾度と練習をしたのかと思わせるほど息が揃っていた。そんな二人に総司も一も労いの声をかけ門をまたいだ。
「ご、ご苦労様です」
鈴も同じように声をかけ、驚いたように視線を向ける隊士に笑みを返した。
笑顔は大切、第一印象は大事!!
隊士の二人は女性だが、労いの言葉をもらい笑みを向けられて悪い気はしなかったのだろう少し顔を赤らめていた。
その様子に、総司はあまり良い気がせずぐいぐいと鈴の腕を引く。
「ほら、止まらないで。腕だけ連れてくよ??」
総司の言葉に鈴は俊敏に反応した。
「待って!!腕だけって何!?!?斬るって意味ですか!?その言葉に斬るって言葉を含ませてるんですか!?!?」
鈴は煩いほどに騒ぐが総司は全無視で腕を引くだけだった。一はずっとその光景を目にしていて、次第に呆れ顔になっていった。
「……早々に嫉妬か??」
一の言葉に、総司は眉をひそめた。
「僕が??なんで??誰に嫉妬するって言うのさ」
意味が分からないと睨む総司に、一はあぁ、そうかすまなかったと詫びを入れ深追いはしなかった。
隊士への第一印象<腕の無事。自分のことを優先するのは、恥ずかしいことじゃないよね!!と少し出来た総司との距離を鈴は小走りでつめる。
ただそれどころではなかった鈴には二人の会話は耳に入ってきていなかった。